題が未だ無い小説(第六章)

 〜第六話〜
 俺は何があっても死にたくはない。今生きているからこそ、しなければならない事が必ずある。それを完璧に成し遂げてこそ、自分の人生は終了する。
 それに俺は「奇跡」を信じている。ピンチな時こそ起こりやすい「奇跡」が起きれば俺は行き続けることが出来るんだ。
 でも、誰かから聞いた話によると、「奇跡は起きる物じゃない。自分で起こすもの」と聞いた。
 でもだ。窮地に立たされてこそ「奇跡」が起きるなら、それは凄い確立じゃないのかって俺は思う。「奇跡」とは何億分の一という、超少ない確立でしか起きないのだ。
 そこで俺は自分自身にこう言おう。
 「そこで諦めたら何もかも終わってしまうぜ。大事なものを失いたくないのであれば、何度でも立ちあがれ。そして勝て!そうすれば、きっと清清しい気持ちになる。さぁ、立ち上がれ!」
 自分自身に勇気付けるのが一番だ。だから立ち上がり続けるんだ。
 俺はその場に立つ。上から降ってくる大きな鎌を目の前にして。
 「ふん。最後の足掻きか?端山。もうすぐにして「死」を見るお前には好機(チャンス)をやるよ。さあ、足掻けたければ足掻け!!」
 阿島は高笑いしながら俺に言う。
 そして俺は勝ち誇った口調で阿島にこう言おう。
 「最後の足掻き?馬鹿な。俺はまだ生き続けるぞ」
 「お前、とうとう馬鹿になっちまったか?これからお前は死ぬと言うのに何を言ってるんだ?」
 「俺はまだ生きてるぞ。そして、俺はまだ生き続けるぞ!!」
 俺が持っている剣が橙色に光り輝く。そして俺は無意識のうちにこう叫んでいた。
 「「死」と「生」を選ぶのは自分自身だ。勝手に決め付けるな!」
 剣が最大に光ったその時、俺は奇跡を起こしてやった。
 「爆雷竜(ヴェルジオン)!!」
 鎌の上に黒い雲が集まり、そこから一つの落雷が屋上に向かってくる。それ以前にその鎌を一瞬にして打ち破り、俺の目の前に落ちる。それは―――。
 「!?ば、馬鹿な。何故、お前が雷竜を呼べるんだよ!!!」
 全身橙色に光り輝いていて、全身には百万ボルトという高電圧を体に纏った雷竜が現れた。
 「サ・・・イト?」
 傷を癒してこちらに向かってきた姫が言った。
 「あり得ないぞ!!何で七守護竜(セブンズドラゴンズ)の七番目の竜、爆雷竜を呼べるんだよ!?」
 「さて、今度は俺がお前に伝えるか。奇跡は起きるもんじゃねぇ。起こすもんだ!!」
 「これが奇跡と言うものなのか?爆雷竜を呼んだだけでお前はちょっとだけ延命しただけだ。無敗轟天鎌(アディスヴェルト)!!!」
 阿島が空高く跳躍してこちらに向かって来る間に姫はこう呟いた。
 「七守護竜《爆雷竜》は、七番目の竜。体の周りには高電圧をシールドにしている。太古昔、落雷したときに生まれた竜と聞いている。何処に住んでいたのかなんて知らないし、どんな防御力なのか知らない。七番目の竜には秘密がありすぎるの。鎌美舞(アディタガ)は、絶対に死んだね」
 すると阿島は彼特有の追加魔法をかけた。
 「喰らえ!回転天降突(サークレッドオリヴァー)!!!」
 爆雷竜はこちらを向いてこう言った。それは俺の脳内に直接だ。
 『主人よ、彼は敵か?』
 「そうだ」
 ただそれだけなのに、竜は攻撃準備に取り掛かった。
 そして爆雷竜は口から十万ボルトという高電圧が伴った光線を出した。それはもろに彼に直撃するが、攻撃している途中なので光線と戦っていた。
 「ま、負けてたまるかーーっ!轟牙(シシルガ)!!」
 何とか対立しているものの、何故か阿島の魔法が切れていた。
 「ば、馬鹿な・・・。この俺が、負ける・・・なんて・・・」
 俺は阿島に届くようにこう叫んだ。
 「奇跡を信じない馬鹿には分からんだろうな。奇跡が起きたからこそ、俺は勝ってお前は負けたんだ!来世で会えたら、次こそは仲良くしような!!」
 「・・・・・・ふん、お前は、本当に、お人、良し、だよな・・・・・・」
 そう言って、光線と共に遥か彼方へと消え去っていった。
 『敵を抹殺した。また何かあれば呼んでくれ。それとこれを置いておく。主人に栄光あれ』
 そう言って、爆雷竜も姿を消した。
 「サイト、これってまさか・・・」
 「そうだ姫。爆雷竜の鱗だ。電圧は無いから大丈夫」
 「ま、家に帰りましょ。明後日から学校が始まるんだし」
 「そうだな」
 俺は鱗をポケットに入れて、屋上から去った。

 極寒の地、氷雪地獄(アイスヘル)にある二人の男女はいた。
 「ちょ、ちょっと!岩凰塊(ラデュリエル)待ってよ!」
 「おいおい、こんなとこで時間割いてどうするんだ?もうちょっとで三輝石(トライルア)の最後の一つ、無創魔の輝石(アムドラ・ユーリア)が手に入るというのに・・・伏せろっ!!」
 すると二人は地に伏せる。すると天から何にかが降ってきた。
 「もう何よ・・・!!これって・・・」
 「超跳弾(スーパーボール)、そうだ。鎌美舞だ」
 天から降ってきたのは丸焦げになった鎌美舞だった。
 「この焦げ後、光系統の技にやられたか。しかも相当威力が強くないとここまで飛ばせやしないぞ」
 「岩凰塊、爆雷竜ならどう?」
 「!おいおい、爆雷竜を呼ぶなんて絶対に無理だぞ。他の竜だけは呼べるんだが、実際に呼んだ人なんていないぞ・・・」
 「じゃあさ、新しく竜姫翁(メイルピア)に魔籍が入った人物ならどうよ?」
 「・・・あり得なくは無い。だがそれも可能性の一つだ。信じるも信じないも自分次第だからな。それにしても・・・・・・」
 「そうだね。既に十翁(テンベイ)から二人はいなくなったね。次は裂踊鎖(チューブリオ)だよね?」
 「・・・・・・任務変更だ、超跳弾。今すぐにでも連絡支部に戻るぞ」
 「え、任務どうするの?絶対に零様は許してくれないよ?」
 「構わん。それは後回した。戻るぞ!」
 「分かった。ちょっと待ってね」
 そう言って、超跳弾は彼から離れてこう叫んだ。
 「轟邪龍(デスドラガイア)!」
 すると、天から闇に包まれた龍が現れた。
 『主人、お呼びですか?』
 「直ぐに連絡支部に戻れる?」
 『主人の願い事なら何でも叶えますよ。無論、可能です』
 「じゃあ私達を乗せて送って」
 『了解いたしました。さあ、私の背に・・・』
 轟邪龍に促されて二人は乗った。
 『最高速度で行きます。なので私の背にがっちりと掴まってください』
 そして極寒の地、氷雪地獄から二人と一匹の龍は姿を消した。

 俺は屋上にいた。悲しい出来事があったから、ここから離れたくなかった。
 「敵は殺せ。さもなくば、こちらが命を絶つことになる」
 姫は俺の背から言う。今、俺は三角座りしていて、姫も背中と背中を合わせて三角座りをしている。夕暮れの空を眺めながら。
 「・・・・・・」
 「悲しいのは良く分かる。だが、これからも「友達」とした敵が現れるかもしれん。免疫を付けとくほうがいいだろう」
 「・・・姫はこういう事、あったのか?俺と会う前に」
 「・・・・・・幾十と出会って殺した。今のサイトみたいに落ち込んでいたな。戦後に」
 姫のその言葉には「悲しさ」という感情が篭っているのに俺は気づいた。姫は俺と似た経験を俺に言っているのだろう。だから、そう言えるのだと俺は思った。
 「・・・ありがとうな」
 俺の口は何故かそう言った。
 「ふん、日々成長し続ければ何も問題ない」
 ちょっと上擦った口調だった。
 「・・・照れてるのか?」
 姫は背中越しにこう言った。
 「私は照れると言う動作を一度もしたことが無い。だから分からん」
 「まあ、いいけど」
 一度も無い、か。別に構わないし、これ以上追求するのも良く無いだろう。
 何故か俺の心境は良くなり、立ち上がる。
 「もう、いいのか?」
 「うん。何かスッキリしたし帰ろうか」
 「そうだな」
 「俺はしたいことがあるし先に正門で待っててくれるか?」
 「分かった。早く来いよ」
 そして先に姫は屋上から去る。
 俺は最後に阿島が立っていた場所に行く。
 すると、何故か俺の脳内がこう言えと言ってくる。これは何の理由を持つのか知らなかったけど、いい事なのだろう。
 「人生尊き命終え、来世再び合い願う(ヴェロスタミフォ・フューライディシュタ)」
 俺は手を合わせて、目を瞑ってそう言った。何かの魔法がかけられたのだけど、それは何なのか分からない。
 「よし、行くか」
 俺は一歩先に進む。何が出てきても俺は俺が信じる道を歩いていくぞ!
 俺はそう決心して屋上から去った。