題が未だ無い小説(第四章)

 〜第四話〜
 平日はほぼ普段と変わらぬ生活を送っていた。休日はだらだらと二日中家に篭りきってパソコン、ゲームなどをしていて、完全クリアを目指して只管やっている。俺はゲームオタクと自分から言うのは過言に過ぎない。平日だって毎日俺が通う、二つ存在してその一つ、箱庭龍聖(はこにわりゅうせい)学園でもそんな不思議と思しき事件なんて起きないし、まず起きることが可笑しいと自分では思っている。だが、いつか友達からこんな事を聞いていた。もう一つ同じのが存在する箱庭竜聖(りゅうせい)学園には、ありとあらゆる不可思議現象が日常茶飯事のように起きていると。
 俺は、夢の見すぎなんじゃないのかって突っ込んでそれ以来、その話を耳にすることは無い。そもそも、それが起きたって事を証明できれば俺は信じざるを得ない。
 ・・・とか、思っていたりする。それを目の当たりに俺はしたのだ。そう、自らの手によって。
 「なーに、自分の世界に入っているのよ」
 俺は我に戻る。今日は平日で普段なら箱庭龍聖学園で授業を受けているのだが、現在は夏休み真っ只中である。だから、こうして家にいるのだ。わーい、ゲーム祭りだww
 「早く我に戻りなさいよ!」
 俺は姫のチョップで我に帰った。
 「!?突然何しやがる」
 「それはこっちの台詞よ!私の大事な時間を割いてまでも、サイトの魔法学習の担当になってるんだから、ちょっとは真面目にやりなさいよ」
 そう、今日は姫と会って早くも一週間が経つ。何?その間は何をしてたかって?そりゃあ、姫は独自で龍神秀(デグラシア)の情報を集めたり、ちょこまかと鬱陶しいザコ兵達を狩ったり等としているのだ。そして俺は・・・。言うまでも無い。俺がするような事なんて分かりきっているだろう。で、今朝の出来事をちょっと教える。相変わらず、俺と姫が会話するときは姫から何故か始まってしまうんだよ。それに開口一番、「あんたの魔法を強化するわよ」とか言い出して一時間、いや二時間経っているだろう。先日の一掃整理(オートクリーン)みたいに、そうそう何度も唱えて成功しても戦争時には役に立たないって言われた。俺って戦力外?などと、内心突っ込んでみたりする。
 とてつもなく綺麗な俺の部屋こと和室にて、俺は姫がある魔法を施して綺麗にしたどこにでもある石を、使って浮遊術を使えといきなり言い出したのだ。
 「さあ、もう一度よ!浮物(リヴァロ)と唱えなさい!」
 何度もやって俺は既に体力がほぼ無いのだ。魔法強化する前に、ある程度の魔法の知識を覚えたのだ。魔法発動時は魔力と体力を比較的に使う。魔力が壮大あっても体力が狭小ならば全然ダメ。なら、まずは体力を鍛えるのが一番なんじゃないのかと問うたけど、体力魔力もろとも消費数が非常にも低い浮遊術を先に学ばせるのがこいつのモットーだとか言ってきたのだ。
 「はぁ・・・」
 俺の日常に溜息が数多くなってきてるかもな。
 俺は精神統一をして、とにかく俺の魔力の源を探って手を伸ばす。
 これは俺の豆知識なんだが、俺の魔力は壮大なのは調査済みなのだ。姫がいない間に、ある一つの魔法だけ習得したのだ。「物を投げる」が人間語で言う言葉で、「アータラナイター」が魔法名。それを試しにどこまで行くのか外に出て、そこらへんにある石を天に向かって思いっきり投げたのだ。すると、その石は天まで果てしなく高く飛んで行き、マッハ5を越すような速度だった。それを見た俺は呆然としざるを得なかった。んで、その石は現在不明。多分だが宇宙まで飛んでいるだろう。それよりも、大気圏の時点で消えているかもしれないが。
 なので、魔力の源に手を伸ばす時にはとても慎重にしなければならないと言う重大な危険を冒してまでも、俺は伸ばしてその極一部分を掴み取った。
 そして、俺はその石に魔法をかける。
 「浮物!」
 そしてそれは俺の目線まで上がる。ちなみに、俺は立っているぞ。さあ、ここからが俺の難題なのである。それを維持することと動かすことを同時にまたもや指導を受けたのだ。
 「操作(レピレル)!」
 まず、浮遊物を自分で動かすことは既に習得している。だが、それも束の間。体力が無いため、一分と経たずに俺の足元に落ちる。
 「はあっ・・・はあっ・・・」
 俺は息切れになっている。そう、俺には維持することが俺の難敵なのだ。
 「む〜〜〜。維持しようと思わないの?」
 「しようと思っているけど、体力が無い時点で三分と続くわけがなかろう」
 「ある人物は言いました。三分あれば敵は倒せると。そして三分あれば色々と出来ると。なのでサイトの最初の目標は三分維持することかな?」
 ウルト●マンやインスタントラーメンを例に挙げて言っている様に俺は聞こえるな。いや、違うならそれでいいのだが。
 「そうだな。最初の一発目は大丈夫だが、二発目以降からダメになってるのは自分でも分かっているんだ」
 すると姫は何かを考えている。やはり、彼女を見るとき腰まで届きそうな赤髪が一番目に入る。やはり、一番に視線が行く。
 「目標が三分だと分かったし、次行こうか。次は剣を稽古。さ、行くよ」
 「ちょっと待てよ。俺は疲れているし、ちょっと休憩時間をくれ」
 「私は早くサイトが戦力になって欲しいから休憩なんていらない。私だって過酷な魔法指導を受けているんだよ?」
 「・・・分かった。五分あればそこへ向かう。どこだ?」
 「庭」
 その一語だけを述べて姫は去った。
 俺の家は周りからは大きいと言われており、庭も剣の稽古が出来るぐらいの大きさなのだ。そんな家に何で俺は住んでいるのかって聞かれるけど、これは誰にも言ってない最大の秘密。トップシークレットだ。
 俺はその間牛乳一本丸々飲んで、体力を回復させる。そして庭へと向かう。
 「遅い」
 姫は仁王立ちして待っていた。
 「五分ぐらいで遅いって言うな」
 「私の大事な時間を割いているんだから考えてよね」
 「はいはい、分かったよ」
 さてさて、ここでも俺の豆知識でも聞いてもらおうか。俺の無駄な一週間の最初に俺はとある実験を施した。その実験とは俺の意識で七彩剣(ななさいけん)虹蒼剣(レイン・ブローウ)が出せるのかどうかである。ま、それは実験成功と言えたのだ。そして一人で剣の振りぐらいは覚えたのである。んで、いつの間にか新たな技が幾つか出来たのであるが、今が秘密だ。
 俺は慣れた手つきで虹蒼剣を出す。
 「で、どんな特訓?」
 「まずは手始めに手合わせ。良いよね?」
 「えっ、ちょっ・・・」
 と、とか言わせてくれよ。言う前に銃弾を飛ばしてくるなんて卑怯な手じゃないか。ま、それをたやすく剣で真っ二つに斬ったんだけどな。俺って凄くね?
 「・・・ちょっと一人で特訓した?」
 「さあ、な。自分の目で確認しろ」
 「ふむ。こっちだけが遠距離用の武器を使うなんて馬鹿げている。私も魔銃剣(アクリメイル)に変えておこう」
 すると、彼女が愛用している灰色の銃は瞬時にして剣に変わった。その剣は赤みを帯びていて、切っ先が何故か銃口になっている。
 「安心しろ。銃弾は打たん。打ったならば避けろ」
 俺と姫は対立するように間をあけ、両者剣を持って構えている。最初に動き出したのは彼女だ。特訓と言わん程の威圧さを俺は感じるのだが、戦争時も容赦なく殺り合うからそれに慣れるのも含まれていると俺は推測する・・・。
 「うおっ!?」
 彼女特有の赤みの帯びた長髪が動きと共に揺れ動く。
 「油断したわね」
 彼女の持つ魔銃剣と俺の虹蒼剣がぶつかり合う。何度か打ち合って彼女は飛び去る。
 「一つ忠告しておくわ。亜鎧奈(アンディリア)戦の時、止めをしようか迷ったでしょ?迷ったら逆に殺されると思っておきなさい。あの時は最後の力を使ってやっつけたけど、今後は気をつけなさい、よ!」
 語尾を強くして振りかぶってくる。しかも横に。それを俺は難なくジャンプして交わす。最近、俺の個人能力も上がってるんじゃないのかって疑ってきているのだ。
 「!?」
 「おらよっ!」
 俺は剣を縦に振る。そして新たな技一つ目、発動。
 「微風波(コルミフィ)」
 これは風系統の魔法なんだが、無色のうちに入っているそうだ。それは本当に微弱で、実在している地を斬ろうとしたが、せいぜい人差し指一本ぐらいの深さなのだ。届く範囲は。だから、彼女に当たることなんてないし、ハッタリだと思えばいい。効果は・・・ハッタリしか考えられない。
 彼女は攻撃が来ると思い、後ろに退く。
 「・・・本当に手加減なしでもオッケー?」
 「うん?」
 俺は地雷を踏んでしまったのだろうか。彼女の威圧さが先ほどよりも濃くなっていた。
 ・・・!この感覚は、亜鎧奈戦の時の・・・っ!
 俺は逃げ腰になりかける。そうだと、剣を一回振るのに失敗が生じる可能性が高くなる。
 俺が構える時間をくれる訳もなく、勢いをつけて俺に突っ込んできた。それを俺は止める。
 剣と剣がぶつかり合う音が果てしなく続く。彼女は防御出来なさそうな所を一箇所ずつ狙ってくる。対処できないと思っていたら、剣が勝手に動き防御しているのだ。
 これが新たな技二つ目である。技と言うべきなのかはさておき。俺は地に剣を置き、石ころを投げてみた。そしたら、勝手に剣は動き、石を木っ端微塵にする。これは俺の意識があるのならばならない状態なのだが、意識が無いときに反射で動いてくれるのだ。
 そして彼女と特訓する中、俺は微妙な自信が湧いて来た。これなら、特訓でも姫を倒せるんじゃないのかって。姫も手加減無しで来ているならこちらも本気で行かせて貰おう。
 俺は防御と共に剣に力を込めてガードをする。それを続けていると、姫が剣を振る回数がテンポ良く減って行ってるのだ。
 「き、貴様何をしたっ・・・」
 初心者如きにやられたくないのか、少しだけ動揺をしている。
 「俺も本気で行かせて貰うぜ!」
 彼女が剣を振った時、俺はスキを見て彼女の右側に移動する。そして剣を振ろうとしたが、流石熟練者。俺が剣を振る前に移動しているではないか。
 「なかなかやるではないか、サイト。これがお前の一人で特訓した成果か?」
 「いや、違うね。まだ、技をもう一つ見せてない。これは俺に反動が来る技なんで使いたくないんだが」
 彼女は剣から銃へと変える。
 「じゃあ見せて頂戴。特訓はもう終了するから。どんな条件が必要なのか教えてくれる?」
 「前方から最強魔法が飛んで来る、逃げる場所が無い時に最後の技が発動する」
 「了解。大轟一打(グランド・ワンガット)!!」
 彼女が持つ銃からは銃口の大きさよりも大きい銃弾が俺に向かって飛んでくる。大きさと速さの比較で、スピードがゆるまっているのだが、それでも逃げれない速さである。
 そしてその大きい銃弾とぶつかった。堅さは剣のほうなのだが、今回は同じようだ。俺はその銃弾を止めているが、俺が押されているのは分かる。こういう時に技は発動するのだ。
 銃弾は徐々に小さくなっているのが分かるだろうか。魔法を吸収しているのだ。だが、反動というのは腕への負担と、多少の傷が体中に生じるだけ。ただな。これを実験するのにどんだけ苦労したことか。姫が帰ってくる前に早く風呂に入って体中を癒したもんだ。
 銃弾は普段どおりの大きさに戻ったが、俺の腕はとても痛かった。
 「くっ・・・」
 俺は地に膝をつき、手をどうにかしようと抑えている。
 「・・・ふぅ。治癒回復(リリクエイル)」
 彼女は目を開いていた。
 「・・・独学で学ぶのもいいけど、魔法とは危険を冒すのを前提にして行動してよね。それとサイトが使った治癒呪文、どうやって学んだ?」
 「それがな。とても痛くて苦しんだ時に脳内が教えてくれたんだよ」
 「ふぅん。ま、今日はこれぐらいでいいよね?私は情報を得るために動かないといけないから」
 「分かった。折り入って言うけど、ありがとうな」
 「謝礼の言葉は特訓の最後に取っておくのよ。今日は暗くなる前には帰ってくるから」
 姫は俺に笑顔を見せて、姿を消した。
 俺は姫の笑顔を見れるのが一番、心が落ち着くのだ。帰れる場所があるからこそ姫は帰ってくる。だから俺は姫と会話が出来るし魔法を教えてくれる。もし―――。
 ・・・止めておこう。そんな事を考えても過去には戻らないし、まず過去には戻れない。俺は後片付けをして、姫の帰りを待っていた。